さるオヤジの 何を今更

今更ながらいろいろと奮闘してます。その自己満足的な記録です。

三連水車のごとく

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記録的な大雨による北部九州豪雨災害から二週間になろうとしている。

今月5日に、朝倉市に降った雨は、午後3時の一時間雨量が129.5ミリと観測史上最高となり、24時間雨量も過去最高の513.5ミリで、平年の7月の月間雨量を超えた。

福岡県の朝倉市や東峰村、大分県の日田市の各地で川が氾濫し、大量の流木が濁流とともに家や人をのみ込んだ。

道路や線路は寸断し、電気も水道も断たれ、孤立した人々は朝倉市と東峰村で2000人以上となり、日田市でも12カ所の集落が孤立化した。

想像を絶する自然の脅威が何の準備もする時間無しに、一気に人々に襲いかかった。



天候が回復し、被害が徐々に明らかになってくると同時に、避難所に身を寄せた人々は絶望し疲弊していく。

自然の猛威に対する人間の無力さを無気力になるほど思い知らされた。



しかし、そんな状況に立ち向かう多くの人達がいた。

比較的被害が小規模だった人々は、消防や自衛隊と共に道路に堆積した土砂や流木を取り除き、緊急車両の通行を可能にし、自衛隊、消防、海上保安庁の

ヘリは被災地を何十回も往復して、孤立した人々を救助し続けた。

結果として、朝倉市では7日には孤立化をほぼ解消し、日田市の県道も12日に復旧し同じく孤立化は解消された。



自宅が土砂に埋まった人達も、少しずつながら復旧作業を始めている。

水を含んだ重い畳を上げ、床下に溜まった水をバケツですくい、ヘドロ状の泥をかき出すという途方に暮れそうな作業を、共に被災した近所の人々と励まし合いながら、時に悔し涙を浮かべながら、何とか元の生活を取り戻そうと必死に頑張っている。



しかし、諦めてしまう人も少なくない。

被災して家や家族を失った人の三分の一の人は、もう家や果樹畑に見切りをつけたいと思っている。

そんな、気力を失ってしまった人達に「頑張って下さい」とか、「また柿や梨を作れるようになりますよ」などという言葉をかける事は出来ない。

それだけ大変な状況になってしまった事は、その人の顔を見れば痛いほど把握する事が出来、逆にそれを打開できる言葉は誰もかけることは出来ないし、増してや、諦める事を責める事など出来るはずもない。

ただ寄り添う事だけが唯一の出来る事のように思われる。



被災者をサポートする体制も整いつつある。

支援物資が届きはじめ、ボランティアも本格的に稼働し始めた。

ボランティア活動に来た学生風の若者がテレビ局のインタビューに応えていた。

「乾いた土砂が思ったより硬くて大変です」

「初めてボランティア活動に参加しましたが見るのとやるのでは大違いで、中々作業が進みません。この暑さも想像以上です」



ここ数日、コンビニに立ち寄ると、お揃いのTシャツを着たボランティア団体の人々を見かけることが多くなってきた。

その中の二人が、お互いにスマホを交換しながら写真を撮っていた。

背景は、一面を土砂と流木に覆われ、砂漠のようになった水田だ。

その田んぼの地主さんは、つい3週間前に、田植えを終えたばかりの水田を見ながら、空梅雨の水不足を心配していた。

同じボランティア団体のTシャツを着た、二人の先輩らしき男性が二人に近寄ってきた。

彼もスマホを出して、三人が肩を組んで自撮りが始まった。


その田んぼを背景に写真を撮ることに対して、不謹慎だとか、無神経だとか言うつもりは毛頭無い。

その写真をSNSにアップしてボランティア活動への参加を呼びかけてくれればいい。

それを見た人が非常識だと思うこと無く、むしろ賛同して、多くの人が活動に参加してくれることを心から願う。


今の被災地には、絶対的絶望的に人手が足りていないのだから。



朝倉市にある国史跡の三連水車は、三つの水車で、力強く毎分6トンの水を汲み上げ水路へと水を送り、関連水車とともにおよそ35ヘクタールの農地を潤す。

220年前にこの地方を襲った干ばつを受けて、先人たちが努力と工夫によって築き上げた、自然のエネルギーを利用して作り上げた揚水水車だ。

今回の大雨で、その三連水車も被害を受けた。
www.asahi.com
被害は受けたものの、ほぼ原型はとどめており、流木や土砂を取り除く作業が始められている。

ただし、水を送る側の田んぼはおよそ7割が被害を受けているため、水車が稼働する見込みは今のところ立っていない。


水車は再び勢いよく水を汲み上げ、田んぼに水を送る日を待っている。200年以上に渡りそうしてきたように。


私たちはその期待に応えるべく、復興という思いを大きな流れにして、それを駆動力に、地元住民と行政とボランティア活動という三つの水車で、広大な被災地に、活力と希望を送らなければならない。


被災して自宅が土砂に浸かった女性が、テレビ局のインタビューに応えていた。

「顔を上げたときにボランティアの人の姿が見えるとホッとする。それだけで頑張ろうと思うことが出来る。本当にありがたい」

九州北部豪雨による災害ボランティア情報【2017年7月16日17:35】(第28報)|ボランティア・市民活動の総合情報サイト「ボラ市民ウェブ」


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