みなさん、埋蔵文化財遺跡の試掘調査をご存知ですか?
遺跡の発掘は聞いた事があっても、試掘は聞いた事ない方が多いのではないでしょうか。
ざっと説明します。
文化財保護法
企業や個人が、工場や家の建築などのために土地の開発行為を行う場合には、その土地に埋蔵文化財があるかどうかを事前に確認しておく必要があります。
この確認は、市区町村の教育委員会でする事ができます。
教育委員会は、これまでの文化財調査や、土地の形状などから、ある程度の埋蔵文化財の位置を把握しています。
この把握されている位置は「周知の埋蔵文化財包蔵地(ほうぞうち)」と呼ばれ、教育委員会に行けばその範囲を示した地図を、誰にでも閲覧させてくれます。
実際には、土地取引の際に、不動産屋等が教育委員会にFAXで地図を送って問い合わせをしたり、自治体によってはWEB上でこの地図を公開しているところもあります。
この確認で、「周知の埋蔵文化財包蔵地」の範囲外ならそのまま着工できますし、届出も不要です。
しかし、この範囲内や近隣で開発行為を行う場合は、文化財保護法に基づき、工事着工の60日前までに文化庁長官に届出をする義務が生じます。
周知の埋蔵文化財包蔵地なら
もし土地開発などの土地が、周知の埋蔵文化財包蔵地やその近隣にかかった場合が、私のような業者の出番です。
試掘調査
先日も市の教育委員会より、試掘調査依頼がありましたので、具体的にその流れを書いてみます。
市の担当者:さるオヤジさん、試掘調査をお願いしたいんですが。来週の水曜日にお願いできますか?
私:ありがとうございます。それでは予定させて頂きます。
市の担当者:詳細をFAXしておきますので、重機の選定と侵入路の確認をお願いします。
私:かしこまりました。よろしくお願いします。
といった感じでFAXで送られてきた資料を基に、当日までに準備と現場の下見を終えておきます。
こんな大事なやりとりがあるんでFAX外せないんですよね~・・。
www.saru-oyaji.xyz
ちょっと話が逸れました。
そして試掘調査当日、
今回の試掘調査は、工場建設のための造成工事が目的の土地です。合計1ヘクタールの田んぼをランダムに8箇所ほど試掘調査します。
先ず
- 市の担当者が試掘箇所を指定します。
- バックホーで、表土をはぎ取ります。
- その下の比較的軟らかい地盤を5から10センチずつ掘り下げていきます。
- そのまま石や砂混じりの地盤が出るまで掘り進んで、範囲を伸ばして行きます。
- 10メートルほど掘り進んだら、担当者が調査・記録して写真を撮影したあとに埋め戻して、また次の場所を同じように試掘します。
結局のところは、大昔の遺跡があるとすれば、固い地盤よりも上で、固い地盤まで掘り進んで確認すれば、そこに遺跡があったかどうかが判断できるという事のようです。
私が見ても全くわかりませんが・・。
以上が試掘調査の流れになります。
ちなみに、この試掘調査の費用は市区町村側が負担(自治体により異なる場合有り)して、土地の所有者は負担の必要はありません。
試掘調査で何も発見されなければ、その後は開発工事等を着工できますが、もし、この試掘調査で重要な埋蔵文化財が発見された場合は、範囲を全面的に広げての本格的な発掘調査となります。
発掘調査
埋蔵文化財が発見されるとワクワクするような気持ちになりますが、開発や建築を予定している側としては、とても困った事になります。
いったん発掘調査が開始されると、その調査のために何か月も着工できない状態が続きます。
しかもその費用は土地の所有者の負担になるんです。
重機代や作業員の人件費やその他の経費やら・・。数カ月間の発掘調査費用は莫大な金額になります。
さらに、そんな多額な費用を払って発掘された重要文化財の所有権は、土地の所有者には帰属しない事になっています。
ただし、事業者が一個人で、住宅建築目的等の場合は国からの補助金を受けられますが、それでも着工は大幅に遅れる事になります。
どっちにしても事業者や土地所有者にとっては、この発掘調査によって損害を被ることになるわけです。
まとめ
今回は埋蔵文化財について書きましたが、いかがでしたか?
みなさんのお住まいや所有地は「周知の埋蔵文化財包蔵地」になってませんか?
気になったら、教育員会に出向いて確認してみて下さい。
身の回りの埋蔵遺跡を知ると、大昔からヒトが暮らしていた場所などを知ることが出来て楽しいですよ。
最後になりますが、私はこの試掘調査を20年以上、年に2~3回の依頼を受けてやっていますが、重要文化財を掘り当てたことは一度もありません。
運が良いのか悪いのか、土地所有者の事を考えると、どちらとも言えませんが、一回くらいでっかい土器を掘り当ててドキッとしてみたいものです。
ははっ・・。それでは~。
スポンサーリンク